SHIGA
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U-TURN

“田舎だからできること”に注目。 ちょうどいい田舎暮らしと田舎づくりの挑戦は続く。

職業
ローカルクリエイター
Uターンルート
滋賀→大阪→東京→滋賀
お名前
野矢貴之さん
URL
わくわく田舎暮らし Wonderful Life



今回お話をお伺いしたのは、「わくわく田舎暮らし Wonderful Life」の野矢貴之さん。“ちょうどいい田舎暮らしとちょうどいい田舎づくり”を掲げながら、現在、築100年を超える古民家暮らし中。

田舎に帰って仕事はあるの?ちょうどいい田舎暮らしって何?田舎暮らしを始めるためには何が必要?など、Uターンや田舎暮らしを検討中の方が気になる質問の答えとアドバイスをお伺いしてきました。


高校卒業後滋賀県を離れ、20年後にUターン。




滋賀県内の高校を卒業後、京都の大学に進学し、1人暮らしを始めた野矢さん。大学卒業後は、京都に約2年住み、大阪暮らしを経て、約10年間東京に。合計すると約20年、滋賀県を離れていたことになります。営業専門のコンサルタントや印刷業など、業種も様々。

大阪に本社を置く会社が東京に印刷会社のショップを出していたので、出向という形で東京へ。学びながら仕事をするきっかけを貰い、印刷のことを一通り学びました。PhotoshopやIllustratorを触ったことは、今も活きていますね。


その後、色々な出会いを経て、初めてのことに挑戦したいとカレー屋兼バーで働くことになった野矢さん。さらに東京で、鹿児島県出身の奥様と知り合い、結婚。2人目の子どもを授かったとき、1人目の子どもは保育園に通っていましたが、預かって貰える期間は3歳まで。

家族会議を行い、滋賀県に戻る話をしたところ、満場一致で決定。

1、2年前から戻るつもりで、Uターン後の仕事や生活の想定をしていました。戻る時期を、2016年3月と決め、半年前からは本格的に家探しに動きましたね。日野町が運営している空き家バンクのHPを見て問い合わせたり、実際に見に行ったり。最終的には相談をしていた銀行の方から話をいただき家を決定しましたが、これから住もうとしている方は、空き家バンクも参考になると思います。







まちづくりを軸にした生活の裏にあった、家族での話し合い。



田舎暮らしに備えて、場所を問わず可能な仕事の準備をしていた野矢さん。当時想定していたのは、前職の経験を活かし、セールスコピーライティングを含むコンサルタントの仕事です。スカイプで契約を行い、何件かお客様を持った上で、日野町にUターン。

しかし、現在はコンサルタントの仕事ではなく、別の分野に興味・関心があるといいます。

どうすれば地方で仕事ができるかを考え、組み立てた上で帰ってきましたが、実際に戻ってきて私が興味を持ったのは“まちづくり”の分野でした。私はこの田舎が好きで帰ってきましたが、このままでは衰退するのでは?と、思う部分もあって。

2014年に発表された「消滅可能性都市」には、日野町の名前は入っていませんでした。しかし、人口が減少する時代に突入していることは確かです。





Uターン後、野矢さんの中で大きく変わったのは優先順位。「いかにお金を稼ぐか」から、「いかに地域に貢献できるのか」「いかに、誰かの役に立つのか」へ。そしてその上で、どうやって仕事を作りだすのかという方向性が固まりつつあるといいます。

地域の役に立ちながら、お金を稼ぐこと。とても素敵なことではあるものの、そう簡単ではない印象を受けます。

「田舎帰っても仕事ないやん」「やることないやん」。これは、地方出身の人が都会に出た後、よく言うセリフです。住んでいる人が少ないから、パイが少ない。パイの影響で、都会と同じことができない。観光客がこない町だから、地元の人だけを相手にしないといけない。実際、仕事はないですし、今のところ、全然稼げていません。

ただ、恵まれたことに、私は家族で役割分担についてしっかり話し合うことができました。家族として、どうするか。家族として、どうやって暮らしていきたいか。そして、協力しあえば、なんとでもなる。これもすごく大切な部分です。


主な収入源を断ち切り、お金になるかならないかわからないことに、家族全員が突っ込んでしまうことに対する不安やリスクは少なからずあるものです。だからこそ、家族としてどうするか、どうしたいのかを話し合っておくことが、Uターンや移住成功の秘訣と言えるでしょう。






大人になった今だから見える、今の日野町と問題解決方法。


子どもの頃は、地域のことに関わる機会が少ないです。それは、父親や母親、その親世代がしてくれていたから。でも、大人になった今だからこそ、自分ごととして携わったり参加したりすることができます。

例えば子どもの頃は、役場に行く用事もありません。でも、今は引越しをはじめ、イベントを開催したいと企画を持ち込むなど、頻繁に役場を訪れる機会が増えました。そういう意味でも、地域や町を知るいい機会があり、余計にまちづくりに対する興味が深まったと思っています。




野矢さんが考えているのは、今まで以上に「楽しい町」「楽しい暮らし」の要素をつくる必要があるということ。田舎に暮らしながら、田舎暮らしを楽しむ。かつ、お金に変えられるようなスタイル。

まさに “ちょうどいい田舎暮らしとちょうどいい田舎づくり”。しかし、ちょうどいい田舎を維持するためには、活動する人口や関係する人口、田舎づくりをする人を増やしていく必要があります。

田舎だからできることに目を向け、旅館業の許可をとり、宿泊業を始めています。一緒に田舎暮らしを体験できる、田舎の宿。宿以外にも、この延長線上に畑や田舎ならではのイベントなどをつくっていければ、と。

さらに、この方向性で、空き家問題や、農地の担い手不足も解決できないかなと思っています。

新しい家よりも、田舎の古い家に住みながら宿をする方が楽しく、楽にできるなら、古い家に住む理由ができます。畑がある方がお客さんを獲得しやすい、お金に変えやすいという利点があれば、オプションとして追加できます。家庭菜園でも、野菜売り場があれば、一石二鳥ですよね。私も、同時に売り場づくりをしようと思っています。


宿に関してはすでに田舎体験民宿としてSun Fieldも手がけている野矢さん。田舎暮らしを体験し、更にありのままの情報を聞いてみたいという方にもオススメです。
参考リンク:わくわく田舎体験民宿 Sun Field



日野町初のチャレンジを続け、移住しない理由をなくしたい。


日野町のギンザ商店街の中にある市田食品の協力を経て、化学調味料不使用の調味料を置くコーナー「自然食品ひとさじ」が始まりました。今後は、無農薬の野菜だけを置くなど、日野町初の試みにも挑戦予定。特色のある場所づくりや、生活との結びつきがあり誰もが参加できるような取り組みも視野に入れ、動き出しています。
参考リンク:自然食品ひとさじ

他の地域の成功例も参考にしながら、日野町でまだ誰もしていないことを率先してやりたいですね。上手くいくかどうかはわかりませんが、私が率先してやって、上手くいったら誰かにそのやり方を伝えられたら。

完全に仕事を辞めて日野町に移住、Uターンをすることに興味がある人に「こんな仕事があるよ」「こんな収入源があるよ」と提案できるようになりたいです。そうすれば、移住しない理由は完全になくなりますから(笑)




「ひのまるマルシェ」主催を機に、地域とのつながりを実感。


野矢さんは、日野町内で開催している“ひのまるマルシェ”の主催者でもあります。第1回目のマルシェ開催は、なんとUターンから半年後!ほとんど知り合いがいない状態にもかかわらず、知り合いの知り合いの出店や、知り合いを通じてマルシェを知った方の来場もあり、大盛況に。

天気に恵まれたということもありますね。ちなみにマルシェ開催に関しても、特別な費用はかかっていません。前職で培ったデザインスキルを活かし、自分でチラシを作成したので、外注費も不要でした。知り合いのお店に置かせてもらったり、知り合いに配ってもらったりしたので、宣伝費もかかっていません。実際、支払ったのはチラシの印刷代くらいです。

もともと地域にいる方と上手くつながることができれば、パッと広がっていくことを実感しました(笑)


さらに、2018年11月18日には、滋賀農業公園ブルーメの丘にて「第四回ひのまるマルシェ」が開催予定です。田舎暮らしに興味がある人、いろいろな出会いを楽しみたい人は、ぜひ足を運んでみてくださいね。
参考リンク:ひのまるマルシェ



滋賀県にUターン後、田舎暮らしを始めたい人に伝えておきたいこと


最後に、田舎暮らしを始めたい方に対して伝えたいメッセージをお聞きしました。

田舎暮らしと聞いて、 “のんびり自然と戯れる”といったイメージを抱く方は多いのではないでしょうか。確かに田舎はそういった面もありますが、必ず地域とのお付き合いがついて回る場所です。

地域との付き合いを楽しくできるような心構えを持ち、自分や家族の生活、将来の方向性をあらかじめ決めた上で、家探しや地域活動をされるといいと思います。

コミュニケーションも、地域活動への参加も、田舎の醍醐味です。面倒くさい部分と感じる方もいるかもしれませんが、私はこれも田舎のいいところだと思っています。自分だけが楽しむのではなく、周りの人と一緒に楽しみながら、同じ田舎暮らしをしている人とつながれば、きっと進む道が見えてくるはずです。


取材を終えての感想

田舎暮らしを決める前に、家族会議でしっかり話し合いを行うこと。県外で得たスキルを上手く活かしつつ、地域の中でつながりと拠点をつくること。そして、楽しみながら生活すること。こういった準備や心構えが、田舎暮らしを楽しむためのポイントなのだと感じました。日野町での田舎暮らしを経験したい方は、一度、野矢さんの宿に泊まってみてはいかがでしょうか。

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