農作物と共に地域を育てる。 地域再発見・フリータウン情報誌『まいスキッ!』を発行。
最初は、農業仲間とイベントを開催していました。農家がやるマルシェの先駆けのような存在。農業体験や食べ物の販売を行い、楽しんでもらえましたね。動員数やテレビ、新聞に取り上げてもらったことからみれば、大成功でした。
ただ、僕たちは農家で、サラリーマンと違って場所は移せません。絶対この土地でやっていかなきゃいけない。そのためには、地域の底上げが必要。農作物を育てながら、地域を育てたい。イベントで地域おこしではなく、地元の人たちが楽しくなる地域おこしがしたいと思いました。
各課からテーマを貰い、特集を組んでいました。最初は、観光課。テーマは『伊吹山』。伊吹山の登山ルートや民話、伊吹山を取材して、紹介。次は、農政課から『農業、食』。給食をカッコイイ器に乗せて、定食のように撮影したり、給食センターを全部まわって、誰が、どうやってつくっているのかを取材したり。全部で17号発行しましたね。
市と一緒にやる大きなメリットは、全戸配布。住民票をおいている世帯には、広報誌と一緒に配られます。ただ、最終号まで、僕がやっているとは表に出ていませんでした。印刷代は自費。広告費として市に買い取ってもらうページもありましたが、他のページの広告の営業やどう載せるかを考えるのは、全部僕の仕事でした。忙しかったですね(笑)。
なぜ飲食店を始めたのか、雑貨屋を始めたのか。Uターン物語と同じです。米原にも、Uターンしたり、家業をついだり、新しく店をもったりした人があなたの近くにいると、地元の人に知ってもらいたいとの思いが大きくて。みんないろいろな物語を持って仕事をしていることを知ってもらいたい、まとめたい。あとは、米原には綺麗な場所がいっぱいあるので、知ってほしいと。ポケットマネーが続く限り、本を出したいですね。
僕が農家ではなく、本業でやるなら、三市くらい引き受けてやりますよ(笑)。ただ、これからは本業に力を入れていきたい。取り組みのひとつが、米原の料理人さんが米原の食材で料理をつくって振る舞う『米原レストラン』。最終的なゴール地点は、米原中のレストランが米原の食材をつかってくれること。農家のネットワークと料理人のネットワークづくりを目指しています。
行政の取り組みだと、どうしても単年度で終わってしまう。もちろん、いろいろな地域活動も含め、お金は必要です。ただ、都会のように利害関係だけで動くと継続は難しい。特に田舎の場合は根付くまでに時間がかかります。コンセプトに賛同する人が集まり、小さく始めて少しずつ大きくすることで、長く続けることができると思います。
地元で生まれ育って、隣のおばちゃんのことも知っている。イベントや事業をしていると、なんだかんだ言って失敗しても、おばちゃんたちは応援してくれる。そのモチベーションがあれば、継続できると思います。Uターンの子たちが、採算度外視で自分が思った方向性に進む、地元のために何かやろうかというのは、その部分が大きいかなと。もちろん人の目も気にする。地元だから、田舎に行けば余計に。気にはするけれど、1個好意的にみてもらえれば、力に変わりますから。
あと、僕がなんでうまくいっているかといえば、農家だから。やめる人が多い農業を、頑張って、地元のためにやってくれているってどこに行っても昔から言われます。ホントだったら、自分の子どもたちに田んぼやってくれって思っている、でも、できない。自分たちもできない、代わりにやってもらっているという人たちばかりだから、好意的。農業は、地元の人にありがとうって言われている業種です。
この数年間で、3、400人の米原の人と話しました。『まいスキッ!』を通して、子育て世代の方から年配の方まで、年齢も立場も様々な人たちと出会い、顔が広くなりました。Uターンして何かをやりたい人に対しても、この人とこの人に一回相談したら、と紹介できます。米原市が面白くなるなら、一緒について行きますよ。