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U-TURN

古着屋siveL。野外音楽フェス。 伸びしろを感じる信楽で多方面から攻め続ける。

職業
古着屋
Uターンルート
滋賀→兵庫→滋賀
お名前
福山淳さん
URL
古着屋siveL



甲賀市信楽町にある、一軒のお店「古着屋siveL」。2016年夏から毎年開催されている音楽フェス「SIVEL WARS」。古着屋店長の顔とフェス実行委員代表としての顔を持つ方が、今回お話をお伺いした福山淳さんです。

信楽で古着屋を始めようと思ったきっかけとは?なぜ音楽フェスを立ち上げたのか?行動の源や、Uターンを決めた理由についてお伺いしてきました。


デザイナーを目指し、県外へ。古着屋で働く中、高校時代の思いが蘇る。


デザイン科がある高校に進学した福山さん。デザインとひとことで言っても、服から絵までその内容は多岐に渡ります。また福山さんが高校生の頃に訪れたのが、ヴィンテージブーム。信楽から京都や大阪に買い物に行く中で、古着屋の店員さんに憧れを抱くように。ここで初めて「古着屋」の仕事を知ったといいます。

18歳のときに思ったのは「古着屋をやりたい」ではなく、「服を作りたい」。高校卒業後は滋賀県を出て、神戸にある服飾系の短大に行きました。将来の夢は、デザイナー。ミシン、デッサン、服づくりの基本を学んだのが、このときです。


しかし、デザインに対する思いはあったものの、古着屋の店員への憧れを捨てきれなかった福山さん。学校卒業後、神戸・元町にある古着屋さんのバイト募集を発見し、働き始めました。「ミシンを使える人」との条件にピッタリ当てはまっていたことが大きいといいます。

20歳頃から26歳まで、6年間、1人暮らしをしながら働いていました。お店では、販売・仕入れ・ミシンのノウハウを全て学ばせてもらいましたね。裾上げやリメイクも含め、本当に全て。




多忙を極める中、地元・信楽に帰ることができるのはお盆と正月だけ。帰省する度に「地元はいいな」との思いが募っていきました。

地元には友達がいますから。ただ、何より大きかったのは信楽には古着屋がないということ。自分の高校時代を振り返ると、大阪・京都まで買い物に行く中で「なんで信楽にないんやろ」とずっと思っていましたから。やっぱり地元で古着屋をやりたい、ないんやったら作ろうと。


信楽には古着屋がない。だからつくる。いたってシンプルな考え方が、原点にありました。



オークションから始まった古着屋は、人が集まる古着屋へ。


福山さんが信楽に戻ってきたのは、26歳のときでした。このころは、ヤフーオークションが始まった時期でもあり、古着をネットで売る人が増えていきます。ここで、神戸時代に学んでいた仕入れなどのノウハウを活用。

布団屋の一角を借りながら、仕入れた服をオークションに出すように。服をハンガーにかけて窓際に置いていたところ、前の道路を車で通った人から「売って欲しい」との声がかかるようになりました。

最初はオークション中心に始めた古着屋ですが、少しずつ訪れる人が増加。Uターンから2年が経過した頃、布団屋の一角を借り「店」としてスタートすることに。そして、2014年には、現在の古着屋siveLの場所にお店が誕生。

店っぽくない、ごちゃごちゃした感じが好き。気軽に行ける友達の部屋みたいな感じ。ソファーが置いている古着屋ってなかなかないと思いますけど、冷蔵庫もあります。買い物よりも、喋りにくる人の方が多いですね。



店のテーマは、60年代のアメリカン古着。ヴィンテージ寄りではあるものの、購入可能な金額であることが多いそう。店内に置かれているアイテムの8割は売り物です。

さらに古着屋siveLの面白いところは、アメリカンカルチャー漂う店内に、昭和レトロな雰囲気が混ざっているところ。大きな飛び出し坊やは、とても目立ちます。福山さんが好きだと感じるアイテムが自由に置かれているため、発見する楽しみがありました。

長居してもらえる環境が理想的。ここはカフェではなく古着屋ですが、喋りにきてくれる場所でありたいですね。ネット中心の販売形態のときは、人と直接会話することがなかったですから。やっぱり、喋る場は原点です。


小・中・高校生も多く訪れる古着屋siveL。地方には、学生が集まれるようなお店は少ないため、学生が気軽に行ける店は、福山さんが目指していた部分でもあるといいます。

高校生の子達が、大人になった時に「あんなところに古着屋あったな」と思い出してくれたら、一旦信楽を離れたとしても、また帰ってきてくれるかなと。


野外音楽フェス「SIVEL WARS」と地元・消防団を通じて地域内外にPR


野外音楽フェス「SIVEL WARS」の企画を立ち上げた福山さん。2016年夏の第1回目来場者数は、およそ3,000人。Uターン後のつながりや様々な方々の協力を得て、信楽初の音楽フェスが誕生しました。

ここ最近はまたにぎやかになってきて楽しいですが、Uターンした直後は、さみしかったですね。昔の方がにぎわっていたという印象です。コンビニができていたことには驚きました。

ただ、私は信楽という町に伸びしろを感じています。そして信楽はデザイン関係の町。「芸術」という意味では、音楽も当たらずとも遠からず。ただ、今までに音楽のイベントが開催されたことはありません。やりたいとの思いが原点です。


2019年8月11日には、第4回SIVEL WARSの開催が決定しています。

参考:【公式】SIVEL WARS 2019

さらに、福山さんは2013年ごろから消防団に加入。破れたホースは捨てるしかない状況に「もったいない」と思うように。さらに、得意なミシン作業を活かし廃棄消防ホースを使ってコインケースやリメイクバッグ、ウォレットの製作をスタート。


滋賀県内の小学校に出向き、講師としてコインケースのワークショップを開催しています。

普段、一般の人にとってホースを触る機会はありませんよね。消防団は、こういうホースを使っているんですよ。これで火を消しているんですよっていうPRにもなるかなと。もっと消防団を身近に感じて貰いたいとの思いもありますね。色々な角度から攻めています(笑)。


2018年に38歳となった福山さん。最前線で活動を続けている人たちが40代、40代後半となる中、20代後半の世代に対し「何かをやって欲しい」との思いがあるといいます。自らがフェスを始めたことも、言葉ではない伝え方のひとつ、とも。

受け継いで欲しいというわけではありません。何か、ひとつの例になればいいなと。フェスを見て「私たちもなんかせな」「新しいことやってみたい」と思う人が出てきて欲しいというのが正直な気持ちです。

何か始めたいという子が相談に来たら、力を貸しますよ。なんならスタッフもやります。ずっと言っているのは、なんかせな、何にも起きひんってこと。失敗するのも勉強、成功したら万歳。黙ってずっと考えているだけじゃあかんなって。


現在のSIVEL WARS実行委員は、全て有志の集まりです。行政とは無関係、かつ補助金の利用もありません。採算面に関しては、厳しい部分があるものの、回数を重ねるごとに改善されています。1、2年目から成果を出すことは難しいため、まずは10年を目指し継続中。5年をめどに収支のバランスをとる計画です。

まちづくりは長期戦。1、2年では何もわかりません。あとは、主催側のモチベーションの維持も大切。最初はがむしゃらに走るから、ある意味やりやすいです。それからが正念場。来てくださるお客さんの期待に応え続けたいですね。



滋賀県にUターン後、何かを始めたい人に伝えておきたいこと



やりたいことがあるなら、やる。これに尽きます。私自身、考える前に動いてしまう性格。いい意味で行動力があるとも言われるけれど、逆にもっと慎重になればと言われることもあります。

でも、やってみないとホンマに何もわかりません。やって失敗するのも勉強。やりたいことがあるんやったら、やった方が良いと思いますね。考えている暇があるんやったら。

その間に、誰か違う人が先にやるとかもありますから。思いついたら即行動くらいでいいと思います。

都会にない、田舎のいいところは地域の人が助けてくれるところ。お店ができたら行ってくれる。都会に店を出したら儲かりますが、お金じゃない何かを得られる部分にこそ、田舎でやる意味があると思います。



取材を終えての感想

高校時代に自分が思っていたこと(古着屋が欲しい)を、大人になって実現されたことに驚きを感じました。現在siveLに遊びに来ている子どもたちが大人になったときに、ふと何かを思い出してくれるといいなと思います。あと、SIVEL WARS 2019も楽しみです!

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