SHIGA
×
Cafe
×
U-TURN

仕事と、旅の両立。 実現できる場所は、地元にありました。

職業
カフェオーナー
Uターンルート
滋賀→大阪→滋賀
お名前
木田友也さん
URL
CICERO



2016年12月に湖南市菩提寺にオープンした、Cafe&Izakaya「CICERO(キケロ)」。昼間はパスタやピザ、デザートが楽しめるほか、週末には居酒屋として別の一面を持つお店です。

今回インタビューしたのは、CICEROのオーナー。カフェ開業に憧れる人にとっては、理想のUターンと言えるのではないでしょうか。

しかし、CICEROが立地する菩提寺は、駅前や観光地ではなく、普通の住宅街です。また、湖南市の人口は約5万人。

一見、恵まれた条件とは言えないようですが、その中でビジネスとしてしっかりと生計を成り立たせ、すでに2年目に突入しています。

飲食店を始めようと思ったきっかけとは?なぜ滋賀県に帰ってきたのか?開業するために必要なこととは?など、今までの経緯とUターンを考えている方へのアドバイスをお伺いしてきました。



美容師からカフェオーナーへ。仕事も大事だけれど、人生を豊かにしたい。




滋賀県湖南市出身。美容師志望だった木田さんは、学校の先生に有名な専門学校を尋ねます。先生が教えてくれた学校は、大阪。美容師になりたい、一人暮らしがしたいとの思いで、滋賀県を出て大阪へ。学校を出てから5年間、25歳まで、大阪で美容師として働いていたそうです。

順風満帆のように思えますが、Uターンをするきっかけは何だったのでしょうか?

正直に言うと、そのまま美容師を続けていても良かったんです。でも、途中で一回旅の楽しさを知ってしまって。でも、美容師と旅の両立は難しい。このまま美容師を続け、旅の楽しさを知らない人生を歩むのか、辞めて自分で何かを始めて自由にできる人生を歩むのか、すごく悩みました。

出した結論は、仕事も大事だけれど、人生を豊かにしたい。じゃあ辞めて何をしたらいいんやろ、と思った時に、地元を思い出しました。地元で何かをするっていうのも楽しいかなと。


Uターンを現実的に考え始めた木田さん。最初に考えたのは実家の土地を使い、家賃がかからない状態で店を始めることでした。また、仲間がいた方が、モチベーションを保ち、本気でやれるのではないかと、友人である岩崎さんに声をかけ、共同事業が始まります。

しかし市街化調整区域など、様々な問題があり、最終的にテナントを借りることに。その結果、今の場所にCICEROが誕生しました。

駅前でもなく、人通りが多い場所とも言い難い立地条件ですが、始めることに不安はなかったのでしょうか?

例えば大阪で店を始めるのであれば、駅前かどうかや人通りの多さは重要だと思います。ただ、滋賀県は車社会。車で10分、20分の距離であれば、そう気にならないのではと思いました。それから菩提寺は、栗東や野洲、水口から見たときもちょうど真ん中。大体20分圏内なので、良いんじゃないかなと。


旅の面白さを知ったことが、Uターン・起業に繋がった木田さんですが、店舗経営が軌道に乗らなければ、旅に出ることは難しいイメージがあります。


もちろん、まだスタートしたばかりで、実際には難しいですね。頑張らないと(笑)。ただ、美容師で独立したとして、そういう時間をつくるにはどれくらい先になるのだろうと考えたとき、イメージしたのは40歳くらい。結構先ですよね。それまでそんなエネルギーはあるのかなと。


僕の中には、最短でできる独立が飲食店でした。だから、飲食店にしましたが、本当に最初は、旅に行くための手段でしかなかったんですね。その中で、食べに行くことも好き、作るという技術的な作業が好き、じゃあ料理は楽しみながらできるなと。


独立から2年目に入ったCICERO。売り上げも安定してきたことで、木田さんの中にも、2店舗目、3店舗目へと向かいたい気持ちが生まれていきます。旅自体も、長期間放浪と言うよりは、3ヵ月に1回、1週間といったペースが理想。世界には面白いことがたくさんあり、見たいものを自由に見に行くことができる環境をつくりたいと、挑戦を続けています。



カフェ+週末居酒屋。そして「味×価格×お洒落」による差別化


飲食店を開く場合「メニュー」「内外装」「仕入れ」など、様々な準備が必要です。その中でも、おそらく最も基本となるお店のコンセプトに関しては、どのように決めたのでしょうか?

最初は居酒屋を始めるつもりでしたが、立地的にも平日の夜の需要は少ないだろうと考えました。岩崎が持って来てくれた情報によると、湖南市付近には昼間に出かける主婦が多いとのこと。そこで、昼はカフェ、夜は居酒屋として始めることにしました。

それから売れているカフェとは何かを考えたときに、やっぱり美味しくてある程度リーズナブルであること。そしてコスパの良さは外せないなと。それから大阪ではお洒落なお店が流行っていましたが、滋賀県ではまだまだお洒落なお店が少ない。差別化に繋げようと、お洒落さには特に力を入れました。



カフェ寄りの内外装。さらに、お客さんが自分で振ってお皿に出す、ジャーサラダ。個人的にも大変お洒落だと思いますが、実はそれ以外のメリットも大きいと言います。

サラダを事前に仕込んでおくことで、サラダ用のスタッフが不要です。またスムーズに提供できるため、お腹を空かせたお客様を待たせることがありません。できるだけ少ない人数で回すための工夫とお洒落さ、その両方がうまく噛み合っています。


違う働き方を考えたときに、まず思い出したのは“地元”でした。


元々、大阪へ出た時には、滋賀に戻りたいとの思いは全くなかった木田さん。大阪でずっとやっていくのだろう、そう思っていた意識を変えたきっかけは、飲食店という新しいジャンルへの挑戦でした。

さらに実際に滋賀にUターンし、滋賀を出る前との印象は大きく変わったと言います。


大阪で色々な文化に触れて、見て、大阪の遊びをずっとしてきたんですね。特に大阪の中心部に住んでいたので。それで一通り遊んで、少し飽きてきたときに、気付いたのが自然の良さです。大阪から行ける範囲で、世界遺産や絶景に足を運び、そして滋賀に戻ってきたので、実はおもろいとこ多いなって思いますね。

ただ、それは実際に経験しないと、思えないことのような気がします。



ずっと滋賀県にいたとしたら、退屈していた。一度外に出たからこそ、気付く面白いスポットがたくさんあるという木田さんの今のおすすめの場所は、日本のウユニ湖とも言われている余呉湖やマキノのメタセコイヤ並木。そして、釣りスポットとしての琵琶湖。レンタルボート屋には、大阪や広島などの県外ナンバーが多く、どうして琵琶湖があるのに釣りをしないのかと不思議に思うそうです。

しかし、人から無理やり押し付けられたのではなく、自然と興味を持ったこと。それが木田さんの現在に繋がっている気がします。



滋賀県にUターン後、カフェを始めたい人に伝えておきたいこと



CICEROのキャパは、35席程度です。カフェだけでビジネスを成り立たせるのであれば、実は、これでも少ない数字。最低でも50席は必要とのことですが、その理由として、カフェの回転率の悪さがあります。

だからといって、キャパを増やせばその分家賃や初期投資の費用も上がるため、単純計算はできません。


ここでのポイントは、CICEROが、カフェ+週末居酒屋の形態であること。カフェ単独ではなく「カフェ&居酒屋」や「カフェ&バル」のように、何かをセットにした方が面白く、ビジネスとしての観点からも、良いのではないでしょうか。

最後に、木田さんに飲食店開業を目指す方につい対して、伝えたいメッセージをお聞きしました。

自分で店を持ちたい人、しかも2〜3年という短いスパンで考えている人。他に能力等があり、独立するのではなく、ゼロから始めたい人には、始めやすい業種ではあると思います。
ただ、苦労しないかといえば全く別です。

僕も、もし独立前に戻れるなら別の地域でしていたかもしれないと思うことはあります。これから新しくカフェを始めたいという人は、人のいるエリアなどを一回調査したほうがいいですね。

それから、やはり今の時代はお洒落なものが流行っています。滋賀県はまだまだそのレベルが低い。だからせっかく東京や大阪にいるなら、お洒落な物をしっかり見たほうがいい。美味しいお店は滋賀県にもいっぱいありますが、感度の高いお洒落さ、引き出しの多さは、都会に比べるとどうしても劣る部分が大きいです。

今、都会にいるのであれば、いっぱい見て、触れて、そしてインプットしまくって来るべきです。そして、それを滋賀県でアウトプットすればいいんです。

僕も滋賀県に帰って来て、頑張っているので、もしこれを読んで滋賀県に帰って来たら、ぜひCICEROにも寄ってください!




取材を終えての感想

僕は、滋賀県を出ていないので、どうしても比較することが難しい部分があります。木田さんが言われた絶景スポットも、行ったことがありません。

しかしインターネットや本から学ぶアイデアではなく、実際に体感した上で得られるアイデアを、吸収し、活用していく。その姿勢が、今のCICERO、そして次の店舗をつくっていくのだと思いました。

いつか滋賀にUターンしたいと思っている人、飲食店開業を目指している人は、今いる場所で得られる物をしっかり得た上で帰って来たらいいというアドバイスが、特に活きるのではないでしょうか。

ノーカットのインタビューの音声を聴く