いつ、誰のために、何の仕事をするか。 全部自分で決める。やりたいことは口に出す。
- 職業
- フリーアナウンサー
- Uターンルート
- 滋賀→東京→滋賀
- お名前
- 能政夕介さん
- URL
- Kotokake
「話す仕事」「言葉を扱う仕事」と聞いたとき、どのような仕事内容が浮かぶでしょうか?
イベント司会、ナレーション、ラジオDJ、朗読、リポーター、コミュニケーションが苦手だと感じている人への話し方講座。これらは全て、喋る仕事です。
今回お話をお伺いしたのは、2013年11月にkotokakeを設立、フリーアナウンサーとして現在も活躍を続けておられる能政夕介さん。前述した仕事は、能政さんの仕事分野の一部です。
フリーアナウンサーとなったきっかけとは?なぜ滋賀県に帰ってきたのか?前職の仕事とは?フリーアナウンサーとして働くために必要なこととは?など、今までの経緯から、Uターンを考えている方へのアドバイスをお伺いしました。
楽天(株)のサラリーマンを退職後、友人と起業!その後、独立しフリーアナウンサーの道へ。
滋賀県草津市出身の能政夕介さん。高校生のときには、アメリカンフットボールを始め、大学1回生まで続けていました。しかし、2回生の時に退部し、立命館大学放送局に入局。3回生になると、俳優養成所にも通い始めます。
周りで頑張っている人たちの影響を受け、自分も何かを成し遂げたいと思ったことが、行動の原動力でした。しかし、オーディションを受ける中で感じたのは、芸能の世界の難しさ。就職活動に専念し、いくつもの内定の中から選んだのは楽天(株)でした。
当時は「楽天=野球」のイメージが強く、親にも反対されました。ただ、インターネットがこれから流行ると思っていましたし、楽天市場、楽天トラベル、楽天証券と色々な事業があるので、面白そうだなと。
同期は300人。当時の会社全体では1,000人規模。大手だけれどベンチャーのような雰囲気もある楽天で、色々な分野にチャレンジさせてもらうことができました。ECのコンサルやメディア戦略もそのひとつ。独立した今もサラリーマン時代の経験は活きています。
Uターンのきっかけとなったのは、友達からの起業の誘いでした。具体的な内容は決まっていないものの、メンバーは学生時代からの友人3人と能政さんの4人です。
楽天の会社は、居心地も良く、人も環境もいい。しかし、20年後、30年後の未来図を描いたときに「このまま会社に残ることがベストかどうかわからない」と感じたといいます。これは、若干26歳のときのこと。そして大きな一歩を踏み出します。
一回くらいなら、道を逸れても修正が効くのではないか?と思いました。ある意味、勢いの部分がとても大きいですね。それから、他の友達も会社を辞める。自分一人なら決断できなかったかもしれませんが、これも縁だと思い、2013年3月。丸4年で退職しました。
滋賀県にUターン後、友人と起業。その後、独立しフリーアナウンサーに。
滋賀県にUターン後、実家に戻り友人と会社を立ち上げた能政さん。しかし、一緒にいることは楽しいけれど、お金が稼げない。自分のやりたいことをうまく伝えることができないといった問題が起き、不安が生まれていきます。
その結果、半年後に4人で話し合いの場を持ち、能政さんともう1人の友人は会社を抜けることに。しかし、現在も事業は続いており、一緒に仕事をしたり、依頼したりする関係として、それぞれの場所で切磋琢磨を続けています。
一人になって、これからずっとやり続けられる、面白いことは何だろう?と思った時に出てきたのは「喋ること」「伝えること」「人と話して、その人の良さを引き出すこと」。自分でアナウンサーをしようと思い、2013年11月にKotokakeを設立。フリーアナウンサーとしての活動を始めました。
大学時代には2年間放送局に所属していたとはいえ、あくまでサークル活動です。人脈もノウハウもない状態でのスタートですが、組織に所属することは考えなかったのでしょうか?
俳優養成所に通っていたときに、事務所に縛られるのは私のコンセプトやポリシーに合わないと感じていました。やりたいときに、やりたい人のために、やりたい仕事がしたいなと。例えば、友達の結婚式の司会を頼まれたとしても、事務所から「その日は仮押さえがあるから行かないで欲しい」と言われることもゼロではありませんよね。
自分の中の一番の優先順位は、大好きな友達の結婚式に貢献すること。それが自分で選択できないというのは大きなストレスです。だったら自分でやった方が気は楽かなと。
アナウンサーを名乗ったとしても、最初は無名の存在です。しかし、自分が進む方向性を表明したことで、一気に応援してくれる人が増えて行きました。結婚式やイベントの司会など、人の縁により、仕事が増えていきます。草津市にあるコミュニティFM「えふえむ草津」のオーディションにも合格。
喋ることはどこでも誰でもできること。でも言葉の部分はプロフェッショナルな部分もあり、ラジオやスポーツの実況は念入りに準備をします。そうすることで見方や考え方を培ってきました。単純に喋るだけでなく、プランニングまでお手伝いすることもあります。自分の色と価値をどう高めるかということは、フリーで行う上でとても重要です。
実は、R-1ぐらんぷりの出場経験もある能政さん。一回戦で敗退したものの、周囲の人にも「出た方がいい!」と薦めています。
立命館大学の入学式は放送部の部長が司会を行うことが恒例です。1万人近い人数を前に、京セラドーム大阪で話したときよりも、100人の前で笑いをとる方がずっと緊張するとのこと。しかし、初めて頭が真っ白になる経験をして以来、緊張しなくなったと言います。
「ここを乗り越えたら怖いものはない!」という言葉には、深い実感がこもっていました。
拠点は滋賀県。仕事の場は、全国各地。
私自身、仕事の場は滋賀県だけにこだわっているわけではありません。京都・大阪・兵庫・東京。ただ、長期的に見たときには、滋賀県を拠点にすることで自分が落ち着くし、いいパフォーマンスが発揮できる気がします。家族も友達もいますし、地元が好きなので。
滋賀県で仕事を見つけることがゴールではないという考え方は、スキルを持ち、場所に縛られずに働く人にとって、参考になるのではないでしょうか。
能政さんに、現在、そしてこれからの仕事について尋ねてみました。
実況はこれからもやりたいですね。高校野球、なでしこリーグ、DaznでのJリーグ中継。実際、ポドルスキが得点を決めた神戸大宮戦で中継ができたことも含め、運の良さはあると思います。ただ、自惚れは全くありません。上手い方はごまんといます。先輩の実況中継を聴きながら勉強して、もっとこうしたいと思いながらやることで生活できているという感じ。
スポーツ中継の実況席にいるからこそ、伝えられることがあります。選手のこと、試合のテーマに関する責任感は必要ですが、自分が伝えた言葉を通して、人にプラスの影響を与え続けたいですね。
喋ることが苦手な人は多いですが、コミュニケーションがうまくとれるようになったら、人間関係はすごくよくなる。スカイプでオンライン講座をしたり、大学や高校でコミュニケーションの授業をしたり。今の仕事は、自分のやりたいことに全部つながっています。
やってみたいことは、まだまだたくさんあるとのこと。例えば小説を書きたい。アーティストになりたい。俳優になりたい。こんな風に「自分がなりたい像」を持つことで、アンテナが広がります。本を読む、最新の音楽を聴くといった行動も、そのひとつです。
また、うまくいかなかったら3年で辞めると決め「何歳でどれだけの売り上げを出す」と目標を設定。区切るからこそ頑張れたとも言えます。実際に、サッカーの実況中継は、イメージでは5年後、10年後の話。実力よりは運の要素が強いものの、言わない人、行動しない人のところには運は来ないでしょう。
もし、喋りで食べていきたいなら、やってみたらいい。実況をやりたいなら、球場に足を運んで練習したらいい。私も練習でやっています。音声を録音して、他の人に聞いてもらう。上手い人の実況を聴くことも大事ですが、自分でやることも大事。
発信していくこと、やっていくことの大切さを伝えたい。発信って発すると信じると書きますよね。自分を信じること、発信して信頼関係を築いていくこと。それができれば、きっと大丈夫。
滋賀県にUターン後、喋る技術で生きていきたい人に伝えておきたいこと
最後に、能政さんに滋賀県でフリーアナウンサーとして働くこと、言葉を仕事にして働くことを目指している方に対して、伝えたいメッセージをお聞きしました。
滋賀県にUターンするメリットは、ある意味自分で追い込めるところ。形がないので自分でつくるしかありません。滋賀でやりたいと思ったら戻って来れば良いし、そうじゃないなら今いる場所にいた方がいいと思います。
これ、Uターン物語じゃないですね?(笑)
東京や大都市圏でしか学べないもの、つくれない関係性は得ておいた方がいいですが、それらがなければ絶対にダメというわけではありません。私自身、戻ってきて何もなかったからこそ、どうやったら貢献できるのか、価値が提供できるのかを考えることができました。
何をやらなければいけないのかを考えるより、今したいことを全力でやればいい。
自分のタイミングで滋賀に帰ってきたときには、素敵な仲間がいたり、いろいろなことに出会えたりすると思います。その中で楽しく、本当に頑張ればいいのではないでしょうか。
取材を終えての感想
アナウンサーの方とお会いしたのは初めてでしたが、滑舌の良さと言葉の選び方がとても印象的でした。「喋ることはどこででも、誰にでもできる。だから、自分の色をつくり価値を高めることが重要」という言葉は、私の仕事にも言えること。自分自身の働き方と向き合うきっかけをいただきました。言葉は、奥が深くて面白いです。
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